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二酸化塩素の歴史

【発見とその後】

現在 (1998年)、二酸化塩素は殺菌・酸化剤として広く知れわたっている。発見されたのは1811年、英国の化学者であり、貴族であるハンフリーディビーが塩素酸カリウムの酸化によって生成させた物質であった。

その後、新たな化学物質による製法が見つかった。化学工業に従事する研究者達の発表する二酸化塩素に関する論文は非常に多岐にわたっていることは驚きに値する。

1930~1940年に掛けて、マチソン・アルカリ研究所が開発した二酸化塩素発生装置は亜塩素酸ソーダ法で、ニューヨーク州のナイヤガラ瀑布流域に設置され、飲料水として供されたのがアメリカでは最初であった。

飲料用水の酸化用途に対して、現在も、高純度の二酸化塩素を生成する装置は業界基準を満たすに至っていない。存在する特許 (Rio Linda Chemical Company)に阻まれ、それ以外の各装置メーカーは大同小異であり、残念ながら生成純度を上げることが出来ないでいるが、容易なことではない。

二酸化塩素発生装置の能力に関して言えば、例えば高純度の二酸化塩素の供給、殺虫作用、防カビ作用、殺鼠剤として、前駆体として、反応率、変換率、効率、性能等には規約上の欠陥が存在する。

一般的な化学薬品を簡単に混合すれば、高純度で二酸化塩素と呼ばれる優れた物質が簡単に生成されるものではない。

二酸化塩素として、亜塩素酸イオンとして、遊離塩素として、結合塩素として正確に読み込まれる分析機器が開発されたことが、高純度の二酸化塩素を生成できる発生装置の開発を妨げているとも言える。

出典:The Chlorine Dioxide Handbook, Don Gates, PhD. 1998年、序文Backgroundより

 

【二酸化塩素の用途開発】

大規模な二酸化塩素発生装置が取り付けられたのは30年前、カナダ・アルバータ州州都エドモントン市(当時の人口80万人)でガソリン・オイル類が原水に流れ込み、フェノールが微量混濁する原水を塩素殺菌する時、異臭味が発生し、浄水場ではその対応に追われていた。

当時、Rio Linda Chemical社(Sabre Oxidation Technologies社の前進)の研究職にあったDonald Gates博士の提唱で、自動制御装置付き二酸化塩素発生装置(亜塩素酸ソーダ + 塩素ガス法)が設置された。河川水前段酸化法を採用し、フェノールの酸化分解を行った。送水ポンプ手前で液化塩素を消毒剤として投与するが、異臭味は完全に消え去った。

 

これが契機となり、アメリカ合衆国全域に、フミン酸(塩素と反応してTHM’sを生成)、アオコ、フェノール、下水再利用水等の対策で普及することになった。

Rio Linda Chemical社は原料亜塩素酸ソーダ、二酸化塩素発生装置、供給の最大手となり、後に、食品加工工場、精肉、魚類、野菜等で繁殖する細菌・ウイルス類に対する消毒剤としての使用を認められることになる。

 

911事件の後に発生した炭疽菌生物テロケースは、アメリカ合衆国東部に、歴史上かってない程の深刻な問題を及ぼすことになった。超軽量、超微細型に特殊加工された炭疽菌は3箇所の郵便集配所を経由し、首都ワシントンの上院議員ビル、NYテレビ局、フロリダ州テレビ局等6か所が汚染され、殺傷事象の拡大を防ぐ目的で完璧な状態までに完全封鎖が行われた。

事件発生1週間後、Sabre Oxidation Techの工場に石油油井活性化目的で保管されていた、大型の二酸化塩素発生装置はUSEPA(米環境省)の手配する巨大輸送機「ギャラクシー」で、ワシントンへ運び込まれた。

EPAは二酸化塩素による、炭疽菌滅菌を決定した。民間総指揮官はSabre Oxidation Technologies社の社長John Y. Masonであった。

10の12乗相当の滅菌を要求され、ビル群が現状復帰するまで、4年近くを必要とした。驚くなかれ、費やされた費用総計は500億円に近いものであった。

その後、ハリケーン・カトリーヌの激烈を極める暴風雨で壊滅した、ニューオーリンズ市の海抜ゼロメートル地帯に広がる大区画において、倒壊を免れた住宅群で発生したカビによる住民への健康被害対策に国が動き、二酸化塩素ガスによる燻蒸が幅広く行われた。

これも二酸化塩素の存在価値を高める結果へと繋がっていった。

 

【そして現在、2016年】

二酸化塩素は新しい時代を迎えようとしている。

2015年アメリカ・オハイオ州立大学の研究論文に「ほうれん草の葉、色素に存在する細菌不活化処理には二酸化塩素ガスが有効性を示した」とある。

 

2015年10月米国微生物学会で発表された、「ステンレス板の表皮に宿るノロウイルスを二酸化塩素ガスで不活化させた」、Linton R. 他、研究論文がある。

 

2006年、R. Linton著に「レタスの葉に宿る大腸菌O-157, サルモネラ菌類を二酸化塩素ガスで不活化する時の時系列」がある。

 

二酸化塩素の用途は上水処理、下水道処理等に対して、処理量が膨大なため、生成能力とその精度に厳しいものが要求される。同時に原料は電力の塊で、その殆どが電力事情から発展途上国で生産されている。各生産国には大小限りない繊維産業が存在し、二酸化塩素の原料は上質な漂白剤としての用途があり、又、輸出基幹産業として特恵を受けており、先進国の1/2の電気料金であることがその大きな理由である。先進国は海上輸送を頼みとすることになり、処理場にとって膨大な予算を計上する必要があり、紫外線、過酸化水素、オゾンに置き換わろうとしている。或は、その多くが二酸化塩素処理法から撤退してしまった。

その一方、ガスの特性を生かした用途では、大型の装置、又相当量の原料を必要としない。中小規模化学・機器・エンジニアリング企業専用市場となる可能性を秘めている。しかも、その市場規模には圧倒されるものもある。

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